肝臓の数値、見直したい生活について
健康診断の結果を見て、「ASTやALT、γ-GTPが高い」「脂肪肝の疑いがある」と書かれていると、不安になる人も多いでしょう。
脂肪肝というと、「お酒を飲みすぎたからでは?」と思われがちです。しかし実際には、お酒だけが原因ではありません。
肥満や運動不足、糖尿病、脂質異常症など、生活習慣や代謝の問題によって脂肪肝になることもあります。
この記事では、脂肪肝とはどのような状態なのか、健康診断のどの数値を確認すればよいのか、お酒との関係、生活の中で見直したいポイントについて、わかりやすく解説します。
1. 脂肪肝とはどんな状態?
まずは、脂肪肝がどのような状態なのかを確認しておきましょう。
① 肝臓に中性脂肪がたまった状態
脂肪肝とは、肝臓の細胞に中性脂肪が過剰にたまった状態です。

肝臓は、食事から摂取した栄養素を体内で利用できる形に変えたり、アルコールや薬などを分解したりする重要な臓器です。
しかし、摂取するエネルギーが消費するエネルギーを上回る状態が続くと、余ったエネルギーが脂肪として肝臓にも蓄積しやすくなります。
② 脂肪肝はお酒を飲まない人にも起こる
以前は脂肪肝というと、アルコールの飲みすぎによるものと考える人が多くいました。
しかし、お酒をほとんど飲まない人でも、肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症などを背景として脂肪肝になることがあります。
日本消化器病学会では、こうした代謝異常と関連する脂肪性肝疾患について、現在はMASLD(マズルディ/代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)という名称が使われています。
つまり、「お酒を飲まないから脂肪肝にはならない」というわけではありません。
③ 自覚症状がないことも多い
脂肪肝の注意点は、初期には自覚症状がほとんどないことです。
肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、ある程度障害が進行しても症状が現れにくい特徴があります。
そのため、健康診断の血液検査や腹部超音波検査をきっかけに、初めて脂肪肝を指摘されるケースも少なくありません。
2. 脂肪肝が気になるときに確認したい肝臓の数値
健康診断で脂肪肝や肝機能について確認するときは、ひとつの数値だけではなく、複数の検査項目を見ることが大切です。
特定健診の肝機能検査にも、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GT(γ-GTP)が含まれています。

① ALT(GPT)
ALTは、肝臓の細胞に多く含まれている酵素です。
肝細胞が傷つくと血液中にALTが漏れ出し、数値が上昇します。そのため、肝臓の状態を確認するうえで特に重要な項目のひとつです。
日本肝臓学会では、健康診断などでALTが30を超えている場合には、慢性肝臓病が隠れている可能性があるため注意するという「奈良宣言2023」を公表しています。
ただし、ALTだけで脂肪肝と診断できるわけではありませんが、検査結果に異常がある場合は、医療機関で原因を確認することが大切です。
② AST(GOT)
ASTも肝細胞などに含まれている酵素で、肝臓が障害を受けると数値が高くなることがあります。
ただし、ASTは肝臓だけでなく、心臓や筋肉などにも含まれています。
そのため、ASTとALTの数値やバランス、ほかの検査結果などを合わせて判断します。
③ γ-GTP(γ-GT)
γ-GTPは、お酒との関係でよく知られている検査項目です。
飲酒量が多い人では高くなることがありますが、胆道系の異常などでも上昇することがあります。
そのため、「γ-GTPが高い=必ずお酒が原因」と決めつけることはできません。
④ 中性脂肪・血糖・HbA1cも確認する
脂肪肝を考えるうえでは、肝機能の数値だけを見るのではなく、中性脂肪、血糖値、HbA1c、血圧、BMI、腹囲などにも目を向けましょう。
現在使われているMASLDという考え方でも、肥満、血糖、血圧、中性脂肪、HDLコレステロールなどの心代謝系リスクが重視されています。
3. 脂肪肝の原因はお酒だけではない
脂肪肝の原因には大きく分けて、飲酒が関係するものと、肥満や代謝異常などが関係するものがあります。

① 飲酒量が多い
長期間にわたり多量のアルコールを摂取すると、肝臓での脂肪の代謝に影響し、脂肪がたまりやすくなります。
さらに飲酒を続けることで、アルコール関連肝疾患が進行する可能性があります。
お酒をよく飲む人が肝機能異常を指摘された場合は、「少し控えれば大丈夫」と自己判断せず、飲酒量も含めて医師に相談しましょう。
② 食べ過ぎと肥満
摂取エネルギーが消費エネルギーより多い生活が続くと、余ったエネルギーは中性脂肪として蓄積されます。
特に内臓脂肪が多い人では、肝臓にも脂肪がたまりやすくなります。
脂っこい食事だけでなく、菓子類、清涼飲料水、夜食などによるエネルギーの摂り過ぎにも注意が必要です。
③ 運動不足
運動不足になると消費エネルギーが減り、体脂肪や内臓脂肪が増えやすくなります。
デスクワークが多い、車での移動が中心、休日もほとんど体を動かさないという人は、日常生活の活動量を確認してみましょう。
④ 糖尿病や脂質異常症など
脂肪肝は、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病と深い関係があります。
特に血糖値や中性脂肪が高い人は、肝臓だけを見るのではなく、体全体の代謝状態を見直すことが重要です。
4. お酒を飲まなくても脂肪肝になるMASLDとは?
「自分はお酒をほとんど飲まないのに、なぜ脂肪肝なのだろう」と疑問に思う人もいるでしょう。

① 従来のNAFLDから名称が変わった
以前は、お酒をあまり飲まない人にみられる脂肪性肝疾患を「NAFLD(ナッフルディー/非アルコール性脂肪性肝疾患)」と呼ぶことが一般的でした。
現在は病名と分類が見直され、日本消化器病学会・日本肝臓学会ではMASLD(マズルディー/代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)という名称を採用しています。
② 肥満だけが原因ではない
MASLDでは肥満だけでなく、血糖、血圧、中性脂肪、HDLコレステロールなど、複数の代謝リスクが関係します。
そのため、見た目が太っていないから安心とは限りません。
健康診断では体重だけでなく、血液検査や腹囲なども合わせて確認しましょう。
③ 飲酒と代謝異常の両方が関係する場合もある
現在の分類では、代謝異常に加えて一定量の飲酒がある場合をMetALD(メットエーエルディー/代謝機能障害アルコール関連肝疾患)と呼びます。
つまり脂肪肝は、「お酒が原因」「食生活が原因」と単純に二択で分けられるものではありません。
5. 脂肪肝を放置するとどうなる?
脂肪肝を指摘されても、自覚症状がないとそのままにしてしまう人もいます。しかし、一部では肝臓の炎症や線維化が進行することがあります。

① 肝臓の炎症につながることがある
肝臓に脂肪がたまっているだけの状態から、炎症を伴う状態へ進むことがあります。
現在は、代謝異常に関連する脂肪肝炎をMASH(マッシュ/代謝機能障害関連脂肪肝炎)と呼びます。
② 肝線維化が進むことがある
肝臓の炎症が長期間続くと、肝臓に線維が蓄積して硬くなる「肝線維化」が進行する場合があります。
さらに進行すると、肝硬変や肝がんにつながるケースもあります。
③ 心血管疾患にも注意が必要
脂肪肝の背景には、肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症などが隠れていることがあります。
そのため肝臓だけでなく、心臓や血管の病気のリスクにも目を向ける必要があります。
6. 脂肪肝が気になったときに見直したい生活習慣
脂肪肝の対策では、原因に合わせて生活習慣を見直すことが基本になります。
ただし、数値や持病によって適切な対策は異なるため、医師の指示がある場合はそちらを優先してください。
① 飲酒量を確認する
まず、自分が普段どれくらいのお酒を飲んでいるのか確認しましょう。
「ビール1本だから少ない」と考えるのではなく、アルコール度数や飲む量、飲酒する日数まで含めて振り返ることが大切です。
肝機能異常を指摘されている場合は、飲酒について医師に相談してください。
② 食事量を極端に減らさない
脂肪肝だからといって、極端な食事制限をする必要はありません。
まずは、食べ過ぎ、間食、夜食、甘い飲み物など、余分なエネルギーを摂取していないか確認しましょう。
主食・主菜・副菜を意識しながら、無理なく続けられる食生活に整えていくことが大切です。
③ 日常生活で体を動かす
運動というと、ジムに通ったり激しいスポーツをしたりするイメージがありますが、まずは日常生活の活動量を増やすことから始めても構いません。
たとえば、歩く時間を増やす、階段を使う、近距離なら徒歩で移動するといった工夫があります。
④ 体重だけでなく腹囲も確認する
内臓脂肪が増えると、脂肪肝や生活習慣病のリスクが高くなります。
健康診断では、毎年の体重だけでなく腹囲、中性脂肪、血糖値、血圧などの変化も確認してみましょう。
7. 脂肪肝対策でよくある勘違い
脂肪肝が気になると、自分なりの方法で急いで改善しようとしてしまうことがあります。
しかし、間違った方法では長続きしなかったり、原因を見落としたりすることがあります。

① お酒を飲まないから大丈夫と思う
脂肪肝は飲酒だけで起こる病気ではありません。
肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症などが関係するMASLDにも注意が必要です。
② γ-GTPだけを見て判断する
γ-GTPは肝臓の状態を見る検査項目のひとつですが、それだけですべてがわかるわけではありません。
AST、ALTをはじめ、血糖、中性脂肪などの結果も合わせて確認します。
③ 数値が少し高いだけだから放置する
肝臓の病気は自覚症状が少ないため、「体調はいいから問題ない」とは限りません。
再検査や受診を勧められた場合は、そのままにせず医療機関へ相談しましょう。
④ サプリメントだけで改善しようとする
脂肪肝対策では、飲酒、食生活、運動、体重、糖尿病や脂質異常症などの背景を確認することが重要です。
特定のサプリメントだけに頼るのではなく、まず原因を確認しましょう。
8. 脂肪肝についてよくある質問
最後に、脂肪肝や健康診断の肝機能数値について、よくある疑問をまとめます。
① 脂肪肝はお酒を飲まなくてもなりますか?
はい。お酒をほとんど飲まない人でも脂肪肝になることがあります。
肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの代謝異常と関連する脂肪肝は、現在MASLD(マズルディー)と呼ばれています。
② ALTが高いと脂肪肝ですか?
ALTが高いからといって、必ず脂肪肝とは限りません。
肝炎などほかの原因でも上昇するため、血液検査や腹部超音波検査などを組み合わせて原因を調べます。
③ γ-GTPが高いのはお酒が原因ですか?
飲酒によってγ-GTPが高くなることはありますが、それだけが原因とは限りません。
胆道系の異常などでも上昇することがあるため、ほかの検査値と合わせて判断する必要があります。
④ 痩せていても脂肪肝になりますか?
なることがあります。
体重だけで判断せず、腹囲、血糖、中性脂肪、血圧なども含めて確認することが大切です。
⑤ 健康診断で脂肪肝を指摘されたら病院へ行くべきですか?
再検査や精密検査、受診を勧められている場合は、医療機関を受診しましょう。
特にALTなどの肝機能数値が高い場合や、数値の異常が続いている場合には、自己判断で放置しないことが大切です。
9. まとめ|脂肪肝は「お酒だけ」と考えず健診結果を確認しよう
脂肪肝はお酒だけでなく、肥満や血糖、中性脂肪なども関係します。
AST・ALT・γ-GTPを確認し、異常を指摘されたら放置せず生活習慣の見直し受診につなげましょう。
健康診断の肝臓の数値は、「去年も少し高かったから大丈夫」と流してしまわず、毎年の変化を見ることが大切です。
特に脂肪肝は、自覚症状がほとんどないまま進行する場合があります。
お酒を飲む人は飲酒量を振り返り、お酒をあまり飲まない人も体重、腹囲、血糖、中性脂肪、血圧などを確認してみましょう。
健康診断を「受けて終わり」にせず、結果を家族の健康管理に役立てることが大切です。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。