パートなのに『106万円』を超えちゃった!?
2016年10月からパートタイマーの健康保険の適用対象者の枠が拡大されました。
この適用拡大をどこかで聞いて、心配するパートタイマーも多いはず。確かに、年収で106万円を超えると、パートタイマーであっても勤務先で社会保険(健康保険と厚生年金)に加入する条件の一つになります。
でも加入条件の一つになるだけで、『106万円』を超えたからといって、すぐに社会保険に加入しなければならない訳ではありません。
これから分かりやすく説明するので、しっかりと理解し、働き方を考えていきましょう。
まずは適用拡大される前の加入条件から説明します。
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1.適用拡大前の社会保険の加入条件(~平成28年9月)
■適用拡大前の加入条件は以下の3つ。
① 働いている会社が適用事業者(社会保険に加入している事業者)であること ② 通常の労働者の4分の3以上の労働時間(おおよそ週30時間)以上であること ③ 1年以上働く見込みのある人(臨時、日雇いなどで働く人でないこと) |
労働時間に気をつければ、年収はいくらあっても会社の社会保険に加入する必要はなかった。
次に、平成28年10月以降の拡大された社会保険の加入条件を見てみましょう。
2.適用拡大後の社会保険の加入条件(平成28年10月~)
■適用拡大後の加入条件は以下の5つ
① 1ヶ月の賃金88,000円(年収で約106万円)以上であること ② 労働時間が週20時間以上であること ③ 1年以上働く見込みのある人(臨時、日雇いなどで働く人でないこと) ④ 被保険者の数が501人以上の企業であること ⑤ 学生は対象外 |
この5つの加入条件に全て該当すると、パートタイマーでも勤務先の社会保険に加入しなければなりません。
全てに該当すればですから、年収で『106万円』を超えたからといって、すぐに勤務先の社会保険に加入する必要はありません。
■間違えやすいポイント
a.加入条件の①『1ヶ月の賃金88,000円』が1ヶ月だけ超えても、勤務先の社会保険に加入する必要もありません。
例えば、アルバイトの学生がいる勤務先だと、学生の夏休みや冬休みに通常よりも多く働く必要があると思います。そんな時は当然賃金も多くなるので、月収が88,000円を超えてしまうでしょう。ですが、たまたま月収が88,000円を超えても勤務先の社会保険に加入する必要はない。
b.加入条件の②『労働時間が週20時間以上』ですが、時給が高ければ週20時間も働かずに、月収88,000円や年収106万円を超えてしまう場合もあるでしょう。このような場合も、勤務先の社会保険に加入する必要はない。
c.加入条件の④『被保険者の数が501人以上の企業』は、『特定適用事業所』に該当します。逆に言えば、被保険者の数が501人未満の企業であれば、適用拡大後の条件には該当しません。
例えば、年収が106万円を超え、労働時間も週20時間を超えても、被保険者の数が501人未満の企業であれば、勤務先の社会保険に加入する必要はない。
3.誤解するポイント
① 年収106万円の中には、すべての収入が含まれない
例えば、通勤手当、残業代、休日の割増賃金、ボーナス、家族手当などは社会保険の加入を判断する収入には含まれない。
② 年収106万円を超えても、夫の扶養から外れない
ここが皆さんが一番気になるところだと思います。社会保険の被扶養者となる『130万円の壁』があります。
これは、自分の年収が『130万円未満』で夫(配偶者)が会社員であれば、夫の被扶養者となり、夫の勤務先の社会保険に加入し、国民年金の第3号被保険者になれるというもの。この場合、妻の費用負担が特にない。
ですが、パートで年収が130万円以上になると、夫(配偶者)の扶養から外れて、自分でパート先の健康保険や厚生年金、または自治体で国民健康保険や国民年金に加入しなければならない。
この『130万円の壁』が『106万円の壁』に変更になったと誤解されている人が多いと思いますが、そうではありません。
平成28年10月から社会保険の加入条件が拡大され、パートの年収が『106万円』以上という加入条件がありますが、ほかの4つの加入条件も全て満たした場合扶養から外れます。ですが、満たしていなければ年収『130万円』未満までは夫(配偶者)の扶養に入れます。
『130万円』から『106万円』に変更されたわけではなく、『130万円の壁』のほかに『106万円の壁』が新しく出来ただけです。
■ここで例えを2つあげます
①パートの掛け持ちで、A社で105万円、B社で24万円の年収になったとします。A社、B社共に年収は106万円以下ですから、どちらも勤務先の社会保険の加入条件を満たしません。また合計の年収は『129万円』、『130万円未満』ですので、夫(配偶者)の扶養に入り続けることが出来ます。
②パートの掛け持ちで、A社で105万円、B社で105万円の年収になったとします。A社、B社共に年収は106万円以下ですから、どちらも勤務先の社会保険の加入条件を満たしません。ですが、合計の年収は『210万円』、『130万円以上』ですので、夫(配偶者)の扶養に入り続けることは出来ません。
この場合、自分の勤務先の社会保険にも、夫の勤務先の社会保険にも入れませんので、自分で自治体の国民健康保険や国民年金に加入しなければなりません。
例え②の場合、国民健康保険料と国民年金で約32万円の支払いになるので、年収210万円から約32万円を引くと、手取り約178万円になります。
4.社会保険に加入した場合のメリット
社会保険に加入した場合のメリットもお話しておいきます。
① 厚生年金に加入することになるので、将来受け取れる老齢年金が増える。 ② 健康保険では、病気やケガで休んだ時には傷病手当、出産で休んだ時には出産手当が支給される。 ③ 社会保険料は勤務先と折半なので、夫が自営業だと家庭の手取りはUP。 |
例えば、4人家族(小学生の子供2人)で妻のパートの年収が約130万円、夫が自営業者で年収400万円の場合で、今まで国民健康保険と国民年金に加入していた家庭だと、年間の手取り額が約13万円増えます。 ※平成29年11月現在のデータを基に計算したものです。
パートの妻が勤務先の社会保険に加入すると、健康保険と厚生年金が会社と折半となり、年間約133,000円の負担。国民年金だと年間約198,000円の負担なので、手取り約65,000円UP。
国民健康保険料は、妻を含めた4人だと約333,000円、妻を抜いた3人だと約268,000円となり、手取りが約65,000円UP。合計で約13万円UPとなります。
以上で説明を終りますが、各家庭で、また働き方で負担の有無が変わってきますので、良く理解して働き方を考えてください。
最後に、タイトルの【社会保険の加入条件。パートは扶養から外れる!?】の答えは、『106万円の壁』の加入条件の全てに該当せず、収入が『130万円未満』であれば扶養から外れない!
また税制上の『103万円の壁』や『150万円の壁』は、【配偶者控除改正!パート収入『150万円の壁』に!!】で説明してますので、是非ご確認ください。
最後までお読みいただき、有難うございました。
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